甲虫目>オサムシ科>マルクビゴミムシ亜科
体長|11~12.5ミリ
時期|-
レア度|★★★★★
RDBカテゴリー|EN
環境|河川敷・中州
分布|本州・四国・九州
黄褐色の頭部が特徴的なマルクビゴミムシ。比較的大きな河川の中~下流域に生息し、礫の混じる砂地水際に見られる。生息地は限られるものの、生息地での個体数は少なくなく、しばしば多産している。日中は石起こしでたまに見つかる程度だが、夜間に水際の砂地を探すと、どこからともなく姿を現した本種があちらこちらに見られる。夜間は微動だにせず静止している事が多いが、ひとたび動き出すと非常に俊敏で、あっという間に彼方へと走り去ってしまう。本種を撮影中、ヘッドライトの灯りに引き寄せられた双翅類が近くの地面に落ちた際、瞬時に駆け寄って捕食していた(画像4)。もしかするとマルクビゴミムシは待ち伏せタイプの捕食者か?冬期は石下などで越冬し、3月下旬頃には活動を開始し、この頃に新成虫も出現する。5月下旬~9月中旬は夏眠のため見られなくなるようで、10月に入ると再び姿を現す。和名の由来にもなっている上翅の一対の黒紋は大きさや形が様々で、更には側縁と翅端部を除く上翅全体が黒化した個体も見られるなど、非常に変化に富む。上翅全体が黒化した個体はカワチマルクビゴミムシ、キベリマルクビゴミムシと似ているが、本種は頭部全体が黄褐色である事や、2種に比べて小型で体型が太短い事などから区別する事が出来る。本種とカワチは同所的に見られる事も多いので特に注意が必要かもしれない。レッドデータブックでは絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定されている。
本種を求めて夜の河原をさ迷い歩いている時、ようやく見つけたマルクビゴミムシがよりにもよって(画像2)の個体であった。最初はカワチマルクビゴミムシ(以後カワチ)だと思ったのだが、その大きさに違和感を覚えた。「こんなに小さなカワチ、見た事がないぞ!?」明らかにいつも目にしているカワチより小さかったのだ。そこでよくよく観察してみると、「頭部がツートンカラーになってない!体型も違う!」って事で、カワチではない疑惑が浮上。そしてキベリマルクビゴミムシ(以後キベリ)では無い事も明らかだった。という事は、残るはフタモンマルクビゴミムシ(以後フタモン)しかいないという事になる。
しかし、この時はフタモンに色彩変異があるという事を知らなかったため、いまいち確信出来ないでいた。恐らくフタモンを見つけたんだとじんわりと喜びつつも、確証を得るために別個体を探した。もしもこれがフタモンであるならきっと近くに通常型もいるはずである。そしてその時は間もなくやって来た。水際の砂地で一目でそれと分かる個体を見つけたのだ。ここでやっとフタモンを見つけたという実感と喜びを味わう事が出来たのだった。キベリの時もそうだったが、色彩変異が多いマルクビゴミは見つけた瞬間に喜べないのが辛いところである。
さてこのフタモン、これまたキベリの時と同じなのだが、この後に続々と姿を現した。そこはちょっと前に見た時には確かに何もいなかったはずの、隠れ場所も何もないまっさらな砂地なのだが、気が付くとにいつの間にかフタモンが佇んでいるのだ。これがとても不思議で、またあれこれと考えてしまった。本種はいったん動き出すととても俊敏で、結構な距離を止まることなくあっという間に移動してしまう事から、周辺の岩場や草地から砂地まで猛ダッシュをきめているのでは?とか、あるいは、このゴミムシ、ケースに確保しておくと、樹上性のゴミムシでもないのに結構な頻度で飛ぶ姿を観察できる事から、飛翔能力に長けていると思われ、何処からか飛んで来ているのかもしれないとも思っていた。
しかし、後日、ネットでとある素晴らしきサイトを見た時にその謎は解明された。なんとこのゴミムシ、砂に潜っているというのだ。「あああああ、その発想は無かった!」見た目がヒョウタンゴミムシのような特殊な形をしているならともかく、ふつうのゴミムシ体型をしているので、その考えは全く思い浮かばなかった(汗)。確かにそれなら突然砂地に現れるのも納得がいく。ただし、どう考えても潜れんだろう?という硬い地面の場所にも出現するので、環境にもよるのだろうが...。
最後にこのゴミムシ、生息地での個体数は少なくないとは言っても、生息地は限られるうえに決して広くはない。しかも生息環境が特徴的なため、一度、環境を把握すると、他産地を見つけるのも比較的容易である。一度見つけると、簡単にポk...フタモンマスターになれてしまうのだ!簡単に一網打尽に出来てしまうのである。なので本種を見つけた際は節度ある採集を心掛けたいところである。黒化型も産地によっては通常型と同じかそれ以上に多産するので覚えておくといいかもしれない...。