サビイロクワカミキリ

Apriona swainsoni swainsoni (Hope)

体長|29~37ミリ

時期|7~9月

レア度|-

RDBカテゴリー|なし

環境|造林地・社寺林・公園・市街地、住宅地(街路樹・庭木)

分布|本州(福島県/外来種)

1. 2022.08 福島県

2. 2022.08 福島県

3. 2022.08 福島県

4. 2022.08 福島県

5. 2022.08 福島県

6. 2022.08 福島県

7.羽脱孔 2022.08 福島県

8.生息環境 2022.08 福島県

9.生息環境 2022.08 福島県

10.産卵痕 2022.08 福島県

11. 2022.08 福島県

12. 2022.08 福島県

13. 2022.08 福島県

14. 2022.08 福島県

15. 2022.08 福島県

中国・朝鮮半島・タイ・ミャンマー・ラオス・ベトナム・カンボジア・インド等を原産とする外来種のカミキリムシ。物資の輸入に使われる木製の梱包材などに幼虫や蛹が紛れていたことにより日本に侵入したと考えられている。国内では2021年、福島県須賀川市で本種の死骸が発見されたのを皮切りに、隣接する郡山市で2019年以前から多数発生していて街路樹を枯らすなどの被害をもたらしている事、少なくても2013年には福島県内に侵入し、すでに県内の広域に広がっている事などが立て続けに報告された。2022年、福島県が行った調査では19市町村で被害が確認されたという。原産国ではエンジュ・ツルサイカチ等のマメ科植物のほか、モクセイ科・キリ科・ヤナギ科・シソ科などを食樹としている事が報告されており、中国ではとりわけエンジュの害虫として有名で「エンジュキラー」の異名を持つという。しかし、国内では主にイヌエンジュに限って見られ、エンジュは例外的にごく僅かが加害されているに過ぎない。東北地方では古くからイヌエンジュを庭先に植える習慣があり、造林も行われていた事から、郡山市周辺にはそこかしこにイヌエンジュが植えられており、このために本種が定着する事が出来たらしい。夜行性で、日中は高所の細枝などに静止しているが、メスは日が暮れると木の低い所まで下りてきてその樹幹に産卵する。この時、産み付けた卵を自身の糞などを塗り固めて円丘状にコーティングするという特異な習性があり、これは本種の生息を確認する手掛かりとなる(写真10)。この習性があるためか、交尾は木の高所でのみ行われるらしく、オスが一緒に木を下りてくることは一切ない。2023年、外来生物法に基づく特定外来生物に指定されたため、飼育・販売はもちろん、生きたままの移動も禁止されている。

 2021年、福島県の街路樹で本種が大発生しているという記事を読んだ時、このカミキリの食樹がイヌエンジュという、個人的に初めて聞く樹木であったため、そんな街路樹はその場所に限って植えられてる特殊なものなのであり、きっと拡散などはせずにすぐに根絶されるものだろうと思った。しかしその後の記事で、イヌエンジュという樹木が東北地方では古くから利用され、広く植えられている事、すでにこのカミキリが福島県の広域に分布を拡大している事などを知った。

 

 それならばという事で、Googleのストリートビューを使い、イヌエンジュを探してみたところ、確かに街路樹ほか、公園や社寺林など、複数箇所にイヌエンジュらしきものを確認できたうえ、本種の加害の痕跡がしっかりと確認できるものまで見つける事が出来たのだった。「これは撮影出来るかもしれない!」そう思えた時から翌年のシーズンが来るのが待ち遠しくて仕方がなかった。しかし、シーズンが近づくにつれ、「街路樹は全て伐採された」「カミキリ全然いない」等の情報をSNSで目にするようになり、決行するか否か大いに悩まされる事となった。(喜ぶべき事ではあるのだが...汗)

 

 しかし最終的には「何処かしらに少しくらい残ってるだろう!?」という事で、いざ福島県へと足を踏み入れたのだった。現地に着いてから早速、目をつけていたポイントを順次回ってみたのだが、確かに街路樹はことごとく伐採されていたものの、公園や社寺林、一部の街路樹ではまだ伐採されずにイヌエンジュが残っており、そのほとんどが激しい加害を受けていた。「これは確実に撮影出来る!」そう思えたのだが、あまりにも致命的な懸案事項があった...。この日は不運にも大雨だったのだ。駄目元で夜間にそれらのポイントを見回ってみたのだがやはり1匹たりとも見つける事は出来なかった。

 

 翌日は曇りで、時々霧雨が降るような天気であった。日中はやる事もないので新たなポイントを見つけるべく車を走らせた。郡山市や須賀川市はすでに多くの虫屋さんによって調べ尽くされていると思われたので、それ以外の地域を重点的に探ってみたのだが、記事にもあったように、確かに民家の庭先など、イヌエンジュは点々と植えられており、中には何本もまとめて植えられているような場所もいくつか見つける事が出来た。そして、そのほぼ全てで加害が確認されたのだった。

 

 そして、最後に見つけたポイントがとんでもなく凄かった。そこにはイヌエンジュが少なく見積もっても50本以上植えられており、ざっと見る限りほぼすべての木が加害を受けていた。恐らくこれが造林地というやつなのであろう。「もうここだけ見れば良いんじゃない?」とさえ思えて、ポイント探索をここで中断した。あとは夜まで天気が持ちこたえてくれることを祈るだけであった。

 

 待ちに待った夜間、どうにか天気は持ちこたえてくれた。とにかく雨が本降りになる前に1匹だけでも撮影しておきたいと思い、他のポイントを無視して最後に見つけた大ポイントへと直行した。手始めに目の前にあったイヌエンジュに懐中電灯の光を照らすと、なんといきなり2匹のサビイロクワカミキリが近距離で産卵しているのを発見!何気なく照らした隣の木にも1匹ついているのが目に入った。外来種という事で見つけた成虫は全て採集するつもりで、ホームセンターで本種がちょうど1匹入るくらいの小さなプラカップを10個程購入しておいたのだが、とても10個では足りない事を瞬時に悟った。その後も次々に見つかり、このポイントだけで少なくても40匹は確認したと思う。どうやら想像以上に被害は深刻らしい。