体長|15.5~16ミリ
時期|-
レア度|★★★★★
RDBカテゴリー|VU
環境|湿地・池沼・河川敷
分布|北海道・本州・四国
湿地に生息する中型美麗アオゴミムシ。大変美しい種で、サイズはアオゴミムシより大きく、前胸も他のアオゴミムシ類とはちょっと違う形をしている魅力あふれる種。とても珍しい種で、生息地はごく限られ、個体数も少ない。ため池周辺の草地や干潟後背のヨシ原などに生息し、夜間に水辺を素早く歩き回って小型の甲殻類や昆虫などを捕食する。ヨコエビは好物の1つなのか?捕食しているところを何度か目撃した事がある。外敵に遭遇した際、水面を泳いだり、枝などを伝って水中に逃げ込む事がある。泳ぎは達者で、かなりの距離を泳ぐ事が出来るようで、陸から見えなくなるくらい遠くまで泳いで行ってしまい、そのまま戻って来なかった事があり、もしかしたらため池の対岸まで渡り切ったのではないか?と思っている。冬期は水辺の土中で越冬し、他のアオゴミムシ類と一緒になって越冬している事もある。夜間、灯りに飛来する事もあるという。絶滅危惧Ⅱ類(VU)にも指定されている。
アオゴミムシの仲間には美しいものが多く、サイズや同定のしやすさも相まって、とても魅力的な被写体である。だから保育社の原色日本甲虫図鑑(Ⅱ)のアオゴミムシのプレート写真のページは大好きで、何度も眺めては、夢と想像を膨らませていたのである。その中でも、とりわけ強い存在感を放っていたのが、ツヤキベリアオゴミムシ(以後ツヤキベリ)である。その洗練されたフォルムと、他種とは違う美しさに、ただただ魅了され、心惹かれまくりだったのである。
しかし、調べてみると、このツヤキベリという虫、どうやらかなり珍らしい種である事が分かったのだ。ネットで検索すると、各都道府県のレッドデータブックに名を連ね、出てくる写真は古い標本写真ばかり。どんなに珍しい種でも、生態写真の1枚や2枚、必ず出て来るものなのだが、それが1枚も出てこない(2009年当時)事からも、いかにこの虫が珍しい種であるかを伺い知る事が出来た。調べれば調べるほど、遭遇は困難に思えてきた。それでも、ネットで見つけた、「千葉県のため池で複数採れた事がある」という、唯一の情報だけを頼りに、何度も千葉県に足を運んでは、本種を探し続けたのである。
そんな冬のある日のこと、友人Nさんの口から思いがけない言葉が飛び出してきた。「ツヤキベリのポイント分かったよ!」「えええ!?本当に!?」Nさんはゴミムシにはあまり興味が無く、ツヤキベリにもそんなに関心を持っていなかったはずなのだが、あまりにも自分が「ツヤキツヤキ...」言っていたからなのか?しれっと知り合いの虫屋さんから生息地の情報を入手していたのである!その週末、早速その地を訪れたのは言うまでもない...。
ツヤキベリの生息地...。いったいどんなに素晴らしい環境なのかと、心を踊らせながらポイントを訪れたのだが、現地に着いてみると、思いのほか普通のため池で拍子抜けしてしまった。本当にここがあのツヤキベリの生息地なのか!?半信半疑になりながらも、とにかく探してみよう!という事で、各々、思い思いの場所を探して周ったのである。近くの斜面を掘ってみたり、石を起こしてみたり、ゴミムシが越冬していそうな場所は一通りチェックした。しかし、一向にツヤキベリが現れる気配は無い。
Nさんのほうはどうなっているだろう? 気になってNさんを探すと、溜め池の縁のちょっとした段差を攻めているところであった。「Nさん、どう?何かいた?」すると、Nさんはおもむろにチャックビニールを取り出し、こう聞いてきた...。「このゴミムシ、何?」ああ、Nさんはゴミムシ興味ないから分からないよね...。「どれどれ自分に見せてみたまえヨ!」等と、冗談半分に手渡されたチャックビニールを見てみると...。「!!!!」「こ、これは!!!」調子に乗ったことを一瞬で後悔する事となった。なんと、その中に入っていたのは紛れもなく、あのツヤキベリアオゴミムシだったのである!「ちょ、こ、こ、これが、これこそが今日のターゲットのツヤキベリアオゴミムシですよおおお~~~!!」って、Nさん、分かってて聞いてきたな...。やられた...。(Nさんがたまにこういう事を仕掛けてくる人だという事を忘れていた...。)
「ちょっと、そこ、自分にもやらせて!」Nさんの直ぐ横に陣取って、同じ段差を攻めていく...。しかし、ツヤキベリは一向に出てこない。すると暫らくしてNさんが声を上げた!「出た!2匹いる!」「なに!?Nさんばっかりずるい!」見ると、ポッカリと空いた小さな穴に潜む2匹のゴミムシの姿!(画像7)1匹はアトボシアオゴミムシであったが、もう1匹は紛れもなくツヤキベリアオゴミムシであった。という事は、ツヤキベリも他の多くのアオゴミムシ類と同じように、集団越冬する可能性があるという事か!?是非ともそんなシーンを撮ってみたい!
ツヤキベリの集団越冬を写真に収めるべく、より気合を入れて頑張ったのだが、とうとう1匹も見つけられないままタイムアップ。結局、この日、見られたツヤキベリはNさんが見つけた2匹のみであった。とはいえ、憧れのツヤキベリを撮影する事が出来たのだから、この日は十分満足し、至福の思いで帰路についたのである。(...はずだったのだが、やっぱり悔しくなって、翌日1人で再チャレンジした自分...。そしてなんとか自分も見つける事が出来た。)