モンクロベニカミキリ

Purpuricenus lituratus Ganglbauer

体長|17~23ミリ

時期|4~6月

レア度|★★★★★

RDBカテゴリー|なし

環境|森林・林縁・土場

分布|本州(西南部)・四国・九州・対馬

1. 2011.05 岡山県

2. 2011.05 岡山県

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5. 2011.05 岡山県

6. 2011.05 岡山県

7.生息環境 2011.05 岡山県

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11. 2011.05 岡山県

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17. 2011.05 岡山県

18. 2011.05 岡山県

上翅にあるシルクハット型の黒紋がお洒落な少し大型のベニカミキリ。新緑の季節、クヌギ・コナラ・ナラガシワ等のひこばえに集まり、カミキリ亜科としては珍しく、葉や茎をフトカミキリのごとくバリバリと齧って後食する。メスはそれら樹木の伐採木や倒木にも集まり、そこに産卵する。生息地は限られるが、生息地での個体数は少なくなく、ひこばえが生える伐採地には多くの個体が集まり、交尾や後食する姿が各所で観察される。しかし、ひこばえで見られる期間は短く、少し時期を外すだけで全く見られなくなってしまう。さらに発生時期はその年の気象条件などによって1ヶ月ちかくもズレる事があるためタイミングを合わせるのが難しい。

 モンクロベニカミキリ...。図鑑でその存在を知ってからずっと気になっていた。普通のベニカミキリは、数が多くて有り難みに欠けてしまうが、よく見てみれば、大きさといい、色彩といい、実は凄く良い虫である。そう、普通のベニカミキリでさえかなり良い虫なのに、それよりも、大型で、加えて上翅にはお洒落なシルクハット型の黒紋まであり、更には希少性までも兼ね備えている。そんなとんでも仕様な昆虫、それがモンクロベニカミキリ(以後モンクロ)なのだ!(※あくまでも個人の感想です)

 

 しかもこれの生態がまた面白いのだ!少なくても日本に生息するカミキリ亜科の成虫は、花粉や樹液を食べるものと相場が決まっているのだが、モンクロは、カミキリ亜科にも拘わらず、そしてベニカミキリにも拘らず、フトカミキリのように枝やら葉やらをバリバリムシャムシャとしっかり齧って食べるのである!姿形はベニカミキリと変わらないのに、それが枝やら葉やらを齧っているのを見ると、なんだ凄く違和感があり、不思議な感じがするのだ。凄く特別感が漂う虫なのである!

 

 しかもこの虫、伐採地のひこばえに大発生する事があるという。伐採地のひこばえに、こんなデカくて赤い虫がペタペタとくっついてるというのだ!なんじゃそりゃ!?楽園ですか!?広大な伐採地、ひこばえの新緑に赤いモンクロ !青い空!なんだその、絵になる組み合わせは!?撮りたい!撮りた過ぎる!想像しただけで楽しくなってくる!そんな楽園に身を置きたい!私はそんな楽園を求めて、岡山に何度も何度も通い続ける事になった。

 

 最初は岡山県で良い伐採地さえ見つける事が出来れば、モンクロは見つけたも同然だと思っていた。しかし、実際はそんな甘いものではなかったのである。いくら環境の良い伐採地を見つけたところでモンクロは何処にもいないのだ。どうもモンクロがひこばえに集まっている期間は意外と短いようなのだ。しかし、それがいつ頃なのか分からずに悪戦苦闘してしまい、モンクロに出逢えたのは実に6回目の岡山遠征の時であった。

 

 2011年5月下旬(24~25日)の事である。そこはこれまでもう何度も訪れている広大な伐採地。今までモンクロはもちろん、他の昆虫さえもほとんど見られずに嘘みたいに静まり返っていたのだが、この時は違っていた。伐採地に着くや否や、ひこばえにとまる赤いものが目に飛び込んできたのだ。「い、い、いた~!!」それは紛れもなく夢にまで見たモンクロの姿であった。見渡せば、あっちにもこっちにも、いたるところにくっていているではないか!正に大発生!ベストタイミング!

 

 嬉しくて楽しくて夢中になって片っ端から撮影していると、その中に一回り小さな赤いカミキリムシ。なんとムモンベニカミキリ!材に目を向ければクリストフコトラカミキリが運動会。本当に楽しすぎる夢のような空間がそこには広がっていた。まるで今までの連敗で貯めてきた運気が一気に解放されたかのようだった。ついに探し求めていた楽園にたどり着いたのである!

 

 という訳で、岡山のモンクロの発生ピークは5月下旬頃だった!と、言いたいところなのだが実はそうではない。これまでも5月下旬にこの伐採地は訪れているのだが、その時は1匹たりともモンクロはいなかったのだ。どうやらその年の気象条件によって大幅に発生時期がズレるようなのだ。早い年だと5月初旬に発生している事もあるらしい...。当たれば沢山いる!でも外すと何もいなくて途方に暮れてしまう。そんな発生状況の見極めの難しさも本種の希少性を高めている所以なのかもしれない...。