スジバナガタマムシ

Agrilus sachalinicola Obenberger

体長|9~13ミリ

時期|7~8月

レア度|★★★★★

RDBカテゴリー|なし

環境|森林・河畔林

分布|北海道・本州

1. 2010.07 長野県

2. 2010.07 長野県

3. 2010.07 長野県

4. 2010.07 長野県

5.生息環境

6.羽脱孔

7. 2010.07 長野県

8. 2010.07 長野県

9. 2010.07 長野県

10. 2010.07 長野県

11. 2010.07 長野県

12. 2010.07 長野県

13. 2010.07 長野県

14. 2010.07 長野県

一見、ナカボソタマムシの仲間を彷彿とさせる、幅広で寸詰まりの体型が特徴的な大型のナガタマムシ。前胸は暗赤色~暗紫色まで変化に富み、上翅には一対の白色紋を備える魅力的な種。山地に生息し、ヤマハンノキ・バッコヤナギの生木に集まる。あまり見られない珍しい種だが、時として大発生している事がある。幹の直径が20センチ程度になるまで成長した、若すぎず、古すぎず、やや若めのハンノキ林を好むようで、条件の良い場所では、樹幹に多数の羽脱孔が空いており、晴れた日の日中には、産卵場所を探して樹幹を歩き回る多くの個体が観察される。より成長したハンノキでは、衰弱部などに羽脱孔が見られる。

 もうかれこれ10数年前の話である...。当時お世話になっていたタマムシ屋さんから、スジバナガタマムシ(以後スジバ)という珍しいタマムシがいると教えて頂いた。スジバはなかなかお目にかかれないいわゆる珍品だというのだが、それが福島県の某所で大発生しているというのだ!しかも生態写真が狙えるというではないか!なんでもハンノキの樹幹を多数のスジバが歩き回り、その葉をスィーピングしようものなら、とんでもない数が網に入るとかなんとか...。「これは行かない手はないぞ」という訳で、有難いことに本人直々の案内のもと、そのポイントへと行く事になったのである。

 

 しかし、決行当日は生憎の雨空...。それも雷鳴り響く豪雨で、傘を差して外に出ようものなら、「おいおい!(雷に)打たれるぞ!」と注意されるような、とんでもない悪天候であった。そんな中でも、せめてポイントの雰囲気だけは見ておこうという事で、実際に現地には行ってみたのだが、そこはやや若いハンノキがまとまって生えている明るい雰囲気の河畔林で、樹幹には無数に空いたスジバの羽脱孔があり、ポイントのポテンシャルの高さを伺い知ることが出来たのであった。「あああ、天気さえ良ければ...!」当然のことながら生態写真は撮影できるはずもなく、この時は泣く泣く引き上げたのだが、この時の経験は後に活かされる事となった...。

 

 それから数年後、別の場所で虫撮りをしていた帰り道の事...。なんだか見覚えのある光景が目に飛び込んできたのだ...。「なんだろう?どこかで見たような光景なんだよな...」「ああ!そうだ!スジバだ!スジバのポイントだ!」そこは、場所こそ違えど、スジバのポイントによく似ているのであった。ちょうどスジバの発生時期の事であったため、まさかとは思いつつも、その林に足を踏み入れてみると...。「いた!!」「ほんとにいた!!」そこには樹幹を歩き回る無数のスジバの姿があったのである。「そうか、これか!これが以前、見せようとしてくれた光景なんだなあ...」あの時の経験があってからこその出来事であった。感謝だ。

 

 それからというものの、似たような環境を見つける度に本種を探してみたのがだ、個体密度の多い少ないはあるものの、更に何ヶ所かでスジバ、ないしは痕跡(羽脱孔)を見つける事が出来たのである。たまたま運が良かっただけなのかもしれないが、もしかして、もしかすると、環境さえ分かってしまえば意外と見つけやすい種だったりすのかも...???しれない。

 

 話は変わるが、クロコモンタマムシのポイントを見つけた時も、「スジバのポイントに似てる!!」と、思ってしまった。クロコモンのホストはヤマナラシ。スジバのホストはハンノキ。どちらも裸地に先駆的に生えてくるパイオニア植物であり、林の感じもよく似ている。更に2種のタマムシは、生木樹幹を多くの個体が歩き回り産卵することや、樹幹に無数の羽脱孔がある点など、共通点も多いと感じてしまったのだが、どうだろう?他にも、珍しいとされているタマムシが人知れず沢山見られる林が何処かにあるのかもしれないと思うと、ロマンがありますね!