ムナコブハナカミキリ

Xenophyrama purpureum Bates

体長|14.9~20.8ミリ

時期|3~7月

レア度|★★★★★

RDBカテゴリー|なし

環境|森林・林縁

分布|本州(福井県~静岡県以西)・九州

1. 2010.06 広島県

2. 2010.06 広島県

3.生息環境

4. 2010.06 広島県

5. 2010.06 広島県

6. 2010.06 広島県

7. 2010.06 広島県

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10. 2010.06 広島県

11. 2010.06 広島県

大型のハナカミキリで、山地に生息するが、生息地は局地的で個体数も少ない珍しい種。ノリウツギ生木の、特に薄暗い場所の苔むしているような樹幹に好んで集まり、交尾・産卵するほか、オスは周辺の植物上にとまっていたり、飛翔している姿がしばしば見られる。産卵は根元付近に行われる。九州では吹き上げでよく採集されている。花や灯火に飛来した記録もあるという。

 2010年6月。Nさんと共にムナコブハナカミキリ(以後ムナコブ)を探しに遠征をする事になった。ムナコブと言えば、某昆虫誌の記事がとても印象に残っている。そこには本種が飛来するというポイントに多くの虫屋さんが集まり、ネット(補虫網)を構えている写真が載せられていた。なんでもムナコブが飛来した際には、それを巡ってネットによるチャンバラ合戦が繰り広げられるのだとか...。

 

 今回行こうとしている所はまさにそんな場所であった。正直、あまり乗り気では無かった。どうにもあの記事を見ていると、競争率が高そうで、とても写真なんて撮っていられそうな雰囲気ではなかったからだ。そもそも、ムナコブというのはとんでもなく珍しい種という印象が強くて、見つけられる気もしなかったのだ。一方、Nさんは妙な自信があるようで、やる気満々という感じであった。

 

 遠征決行の前日、天気予報を見ると、ポイント付近はこの先暫く雨続きの予報であった。「これは遠征は中止だろうな...」と思いつつも、決行するか否かの判断をNさんにお任せしたところ、まさかの「決行」という返信が返ってきた。「(えええ、マジですか...。行きたくないぞぉ...汗)」判断をNさんに任せた手前、今更「中止にしよう」とも言えず、遠征は予定通り決行されることとなった。

 

 翌日...。ポイントに向かう道中は予報通りの雨、それもとんでもない土砂降りで、「ああ、もうこれは撮影どころではないな...」と、完全に諦めモード。「遠路はるばる何しに来たんだろ...」と絶望感に襲われていた。しかし、ポイントに近づくにつれて、次第に天気は回復、現地付近に着いた頃には雨は完全に止み、雲間からは青空まで見えてきたのである。やる気は沸々と沸き上がっていった。「もしかしたらこれはいけるかもしれない!!」

 

 そうなると、次の懸案事項は「ポイントにどれだけ多くの虫屋さん(ライバル?)が集まっているのか?」という事であった。恐る恐るポイントへ入っていくと、まさかのスッカラカン...。誰一人として虫屋さんはおらず、ポイントは閑散としていた。「何故に???」予想外の出来事に、これはこれで不安になってしまった。「もしかしたら発生時期を外してしまったのか?」それとも「ここはもう過去のポイントで、もうムナコブはいないのでは?」狙いの種が種だけについつい弱気思考になってしまうのだ。

 

 ポイントもどんなに素晴らしい環境なのだろうかと期待していたのだが、実際にはスギ植林が多く、だいぶイメージとはかけ離れていた。「本当にこんな所にムナコブは生息してるのだろうか?」疑わずにはいられなかった。しかし、少し周辺を散策してみると、なるほど、確かに林縁にはムナコブのホストであるノリウツギが所々に生えており、中にはいかにもムナコブがやって来そうな、立派なノリウツギの株も幾つか見つける事が出来たのだった。

 

 一通り環境を確認し、とりあえずムナコブの飛来を待ってみる事にしたのだが、間もなくしてNさんが声を上げた。『いた!』「え?何が?」『ムナコブ!』「はいいい??」とても信じられず、てっきり冗談を言っているのかと思ったのだが、見て見ると本当にムナコブがいる(写真2)ではないか!!「まじかあああ!!?」林縁のイタドリ葉上に佇むそれは、どこかで見た事のあるムナコブの写真そのもの光景であった。まさかまさか、本当にムナコブに会えるとは!めちゃくちゃ興奮し、歓喜した。

 

 そこからは完全にスイッチが入ってしまい、先ほど見つけていおいたノリウツギを改めて見に行ったり、林内に突入してみたりと、無我夢中になってムナコブを探した。その結果、ノリウツギの葉上で別のオスを発見。更には樹幹で産卵するメスと、その上方で待機するオス、ノリウツギの周辺を飛翔する個体など、幸運にも複数個体を見つける事が出来たのである。

 

 どうやら虫屋さんがいなかったのは、時期を外したからとかそういう事ではなく、天気予報が思いっきり雨予報になっていたため、採集をとりやめた人が多かったものと思われる。そう、こんな大雨の予報が出ている中で採集に行こうとは普通は思わないはずなのだ!にも拘らず、遠征決行を決断したNさん...。本当にナイス判断!!グッジョブ!!