体長|11.6~17.8ミリ
時期|7~8月
レア度|★★★★★
RDBカテゴリー|なし
環境|森林・林縁
分布|本州(中部以西)・四国
和名の通り、前胸の中央に深い縦溝があるのが特徴的なハナカミキリ。山地の針葉樹林に生息するが、少ない。トウヒ・ヒノキ・カラマツ・ツガ等のかなり腐朽の進んだ切り株や立枯れ、樹洞に集まり、交尾・産卵するほか、オスは林内を低く飛翔していたり、日陰に咲いているノリウツギ・リョウブ・シシウド等の花に来る事もあるという。上翅の黄色い斑紋は変異があり、消失気味の個体も見られる。
ムナミゾハナカミキリ(以下ムナミゾハナ)は花にあまり集まらず、針葉樹の古い切り株などに見られるという、少し変わったハナカミキリ。某エリアで見られるという話は聞いていたので、何度か挑戦したものの、未だ見つけられないでいた。そしてこの日もNさんと共にそのエリアにムナミゾハナを探しに訪れたのであった。2009年8月初旬の事である。
数度目の挑戦という事もあり、Nさんには怪しいと睨んでいるポイントがあった。「やっぱりここしかない!」Nさんが断言するそのポイントは、自分がイメージするムナミゾハナの生息環境とはだいぶ違っていた。自分がイメージしたのは、明るく開けた環境にあるカラカラに乾燥した針葉樹の切り株だったのだが、Nさんが言うポイントはその真逆。いかにも湿度が高そうな薄暗い林内であった。「いや、いや、いくらなんでもここは違くない!?」「苔むしちゃってるけど?」半信半疑になりながらも林内に突入すると、なんとそこで虫屋さんに遭遇。しかもその方、ここでムナミゾハナを採った事があると言うではないか!Nさんの読みは正しかったのだ!
いると分かればこちらのもの。気合を入れて林内を探索すると、確かに林内には針葉樹の切り株が点在している事が分かった。 しかし、それはどれも腐朽が進んでおり、とてもカミキリムシが集まるようなものには見えなかった。本当にこんな朽木にムナミゾハナはやって来るのだろうか?未だ半信半疑のまま探索を続けていると、その時は唐突にやってきた。「!!!!」「いた!」「本当にいた!」朽ちて苔に覆われている切り株にムナミゾハナのオスが佇んでいるのを見つけたのだ!あああ、やった、やった!ついに念願のムナミゾハナカミキリを見つける事が出来たのだ!(写真1)
早速Nさんに報告すると、ほどなくして、今度はNさんが声を上げた。「こっちにもいた!」Nさんの所に駆け寄ると、そこにあったのは、もはや原型を留めないほどにボロボロに崩れたあまりにもショボい切り株...。しかし、Nさんが指差す先には確かにムナミゾハナがとまっていた。今度はメスの立派な個体であった。Nさんはそれを見つけて直ぐに自分を呼んだくれた為、気が付かなかったのだが、その切り株の裏側、自分の目の前には衝撃の光景が広がっていた。「ちょ、こっち側にもいる!」「しかも交尾してる!」「いや、もう1匹いる!!」「いや、なんかいっぱいいる!!!」
なんと、そこには6匹ものムナミゾハナがくっ付いていたのである!何でこんなにいるの!?こんなとりわけショボい切り株に!?その切り株の何が良いのかはさっぱり分からなかったが、ムナミゾハナにとってはよほど魅力的だったのか、この切り株だけで、3♀4♂計7頭ものムナミゾハナが見られたのである。思いがけない成果に顔はほころぶばかりであったが、この直後、Nさんがオオトラカミキリのオスを見つけてしまうという、とんでもないサプライズまであり、大興奮の一日となった。