セアカオサムシ

Carabus tuberculosus Dejean et Boisduval

体長|16~23ミリ

時期|-

レア度|★★★★☆

RDBカテゴリー|NT

環境|草地・畑地・牧場・疎林・河川敷

分布|北海道・本州・四国・九州

1. 2009.01 茨城県

2. 2009.01 茨城県

3. 2009.01 茨城県

4. 越冬環境 

5. 2009.01 茨城県

6. 2008.01 茨城県

7. 2008.01 茨城県

8. 2008.01 茨城県

9. 2008.01 茨城県

10. 2008.01 茨城県

体長が20ミリ程しかないとても小さな美麗オサムシ。平地~山地に生息し、主に草原やそれに近い環境で見られるが、生息地はやや限られる。牧場やスキー場、河川敷や疎林などに生息している事もある。主に夜間活動し、地表を歩き回って鱗翅目幼虫やその他昆虫等を捕食する。春に繁殖し、8月中旬~10月頃に新成虫が現れる。冬期は土中や石下、苔下などで越冬するが、崖や朽木崩し等の一般的なオサ掘りで出てくる事はほとんど無い。場所によっては多産するが、基本的には少ない種で、準絶滅危惧種(NT)にも指定されている。

 2007年冬のある日のこと、ネットで見つけた一文に目が釘付けになってしまった。なんでも「茨城県某市で苔の下から越冬中のセアカオサムシが複数見つかった...」と言うのだ。そこには1枚のそれらしき写真も添えられていた。セアカオサムシはオサ掘りで出てきたという話を聞いたことが無く、何処か特殊な環境で越冬しているのだろうとは思っていたが、まさか苔の下だったとは!しかも複数とは!

 

 情報は「茨城県某市」と「苔の下」という2つのキーワードのみだったが、いてもたってもいられず、年明けの1月にNさんと共に茨城県某市へと出掛けてしまった。車を適当に走らせながら、セアカオサムシ(以下セアカ)がいそうな環境を探す。しかし、良さそうな場所はなかなか見つからない。草原環境さえ見つけられればこちらのものと思っていたのだが、そもそも草原環境が見当たらないのだ。仕方なく、草原の有無に関係なく、とにかく苔を見つけては調べてみるの繰り返し...。意外にも苔の下はクロオサムシを初め、ゴミムシやシデムシ等、多くの昆虫が越冬に利用しているようで驚かされた。苔剥がし、楽しいかもしれない...。

 

 苔を探して車で移動をかけていると、Nさんが「あそこでやってみよう」と言う。そこは道端にあるごく小さな空地で、地表は確かに苔に覆われていたものの、周辺はスギ植林に囲まれており、草地は見渡す限りどこにも見当たらなかった。「いやいやいや、流石にそこは無いでしょう!」そこはやるまでもなくセアカはいないと断言出来るほどショボい環境であった。暗いし狭いしスギ植林だしと、セアカのイメージとはかけ離れ過ぎていたのだ。それどころか、他のオサ・ゴミすらもいなさそうである。それでもNさんが、「苔があるし、やってみよう」というので、仕方なく、そこで探してみる事にしたのだった...。

 

 Nさんが早速、苔めがけて手鍬をいれると、いきなり声を上げた。「クロオサ(ムシ)、出た!」なんと、最初の一振りでオサムシを掘り出してしまったのだ。「えええ、マジですか?(こんなショボい環境にもオサムシっているんだ...)」見てみると、ぽっかりと空いた小さな穴から、オサムシの前胸の一部のみが見えていた。しかし、なんだか妙な違和感を感じる...。「これってクロオサ?」思わず問いかけると、「クロオサでしょう?」とNさんが答える。そこで少し穴を広げてみると、ますます違和感が...。「え?これ本当にクロオサ?」「クロオサでしょう?」更に穴を広げると、見覚えのある特徴的なエリトラが姿を現した...。「え、ちょ、これ、セアカじゃ?」「セアカだよ!?」「セアカだあああああ!」 なんと、それは探し求めていたセアカオサムシだったのだ!「まさかこんな環境に!?」あまりにもイメージしていた環境と違っていたので驚愕してしまった。

 

 喜び勇んで撮影していると、その間にもNさんは周りの苔の下を次々に確認していく...。自分が撮影を終えた頃には、全面の苔をくまなく調べ終えていた。「いったい何匹見つかったの!?」なにしろ一振りでセアカを出しているのだ。とんでもない高密度でセアカが越冬している事は容易に想像できる。しかし、Nさんから帰ってきた言葉は意外なものだった。「1匹...」「嘘でしょう?」信じられないことに、この後ここで追加できたのはたったの1匹だけだったのである。密度は決して高くない、いや、むしろ薄かったのだ!にもかかわらず、最初の一振りでセアカを引き当ててしまったのは奇跡に近い...。Nさんの天性のものとも思える勘の鋭さには脱帽する。Nさんがいなければセアカを見つける事は出来ていなかったであろう。感謝だ。(因みに、その後、本当にセアカが高密度で越冬している場所も見つける事が出来た。)