体長|16~23ミリ
時期|4~6月
レア度|★★★★★
RDBカテゴリー|なし
環境|森林
分布|本州・四国
早春~初夏、ヤマシャクヤクの花に集まり花粉や花びらを食べる。ヤマシャクヤク自体が少なく、自生地が限られているので、これをホストとしている本種もおのずと産地が限られる。生息地での個体数も少ないのが普通だが、中には多産する場所も存在する。ヤマシャクヤクの開花期間はとても短いので、開花のタイミングを合わせるのが難しく、開花の時期を外すと本種を見つけるのは難しい。黄色くて丸っこい見た目から「キマル」の愛称で呼ばれることもある。
本種はずっと撮りたいと思っていた憧れの昆虫の1つであった。虫自体の魅力は勿論だが、ヤマシャクヤクの花に集まるという生態がよりこの虫の魅力を引き立てた。この可愛らしいカミキリと可憐な花との組み合わせが、なんとも良い絵になるではないか。ネットで本種の素晴らしい生態写真を見て以来、すっかりその虜になってしまった自分は、本種を探すため、何度も兵庫県まで足を運ぶことになった。
なぜ兵庫県なのかと言えば、自分の知りうる本種の情報が「兵庫県某所で撮れた」というそれしかなかったからに他ならない。しかし、その挑戦はことごとく失敗に終わり、本種を見つけられないまま数年が経過していた。この年も兵庫県まで行ったのだが、ヤマシャクヤクの花期を外してしまい惨敗...。ガックリ肩を落として神奈川県まで戻ったのである。それから数日後、当時お世話になっていた虫屋さんの手伝いで、とある虫屋さんの家を訪れる機会があったのだが、そこで、偶然にも本種に関する貴重な情報を得ることになった。それは、「つい先日、関東某所でキマルを採ってきた人がいる」という極めてタイムリーなものであった。
詳しい場所を教えてもらった自分は、いてもたってもいられず、その日のうちにその場所へと向かい、その日の夜にポイントに到着し、そのまま真っ暗な林内へと突入した。キマルは昼行性ではあるが、そのまま花に残っているイメージがあったので、夜でも見つけられると思ったのだ。林に入ると、すぐにヤマシャクヤクの花が目に飛び込んできた。花は閉じていたのだが、そっと花を開いてみると...。「!!!!」 なんとそこには憧れ続けたフタスジカタビロハナカミキリのペアが佇んでいるではないか!ポイントに着いてほんの3分足らずの出来事である。これは明日も期待できる!翌日の撮影に備え、この日は車に戻って寝る事にしたのだが、興奮と感動で眠れぬ夜を過ごす事となった。夜明けがこんなにも待ち遠しく感じたことはない。
翌朝、満を持して改めて林内へと入ると、そこにはヤマシャクヤクの見事な群落が広がっていた。早速、それらの花を1つ1つ覗いていくと、2つ目の花で早くもフタスジカタビロハナカミキリを発見。更に驚くべきことに、3つ目、4つ目...、そのほとんどに本種の姿が見られたのである。更に気温が上がると、花に飛来する個体も現れ、次から次へと見つかるキマル達...。その数はかるく50匹を超えていた。そこは本種が超高密度で生息している、まさにフタスジカタビロハナカミキリの楽園だったのである。